Daily Archives: 2015年12月30日

[2015年3月卒業]
今年度卒業証書をいただいた。
昨年度までに卒業された皆さんに申し訳ない気持でいっぱいだ。なぜなら私が卒業証書の価値を大幅に下げてしまったと思うから。今思っていることは、これから少しでも進歩して、いい演技ができるようにし、皆さんをがっかりさせないようにしたい、ということ。
もちろんこれからもレッスンを続けるのは、先輩方のためというわけではない。自分自身のためだ。演技の世界は豊かで奥が深く、魅力的だから。

子どもの頃演劇にあこがれていた私は、社会人になり、その思いを封じ込めてきた。しかし時にその思いが頭をもたげた。そういう時は、「演劇は架空の世界だ。私は現実の世界で活動しているのだ。」と自分をなだめすかした。でも退職したら演劇をしよう、と夢を描きもした。
そして早めに退職した私はこのスタジオCANの門を叩き、アマチュアコースに入った。演じるのは簡単なことと思っていた私は、それがとんでもないことだとすぐ気づくことになる。
最初の体験レッスンから、「難しい!」と思った。体操でつまずくし、発声のカリキュラムでは他の生徒さんと比べものにならないほど時間がかかってしまった。でも辞めたいとは思わなかった。その一番の理由は、先生が決して諦めず、導き続けてくださること。

私は昔、「演劇は架空の世界」と思った。今も一面から見ればそうだと思う。しかし「演技」に関して言えば、本当のことしかやってはいけないのだ。そのこと をスタジオCANで学んだ。観る人には、本当のことをしているかどうか伝わってしまう。嘘は見抜かれるのだと実感を持って理解する。理解しながらも、本当 のことが私にはなかなか出来ない。私に染みついた「演技=それらしく振る舞う」というイメージが洗い落とせないのだ。しかし、「本当の演技」に向かう道が 見えることがある。ある時は先生の温かいひとことの後で、ある時は先生の恐ろしい(?)ダメ出しの連続の後で。そしてスタジオで道が見える時もあれば、帰 りの電車の中で突然目の前に道が開けることもある。鈍い私の感覚がやっと働き始める、その時……楽しい。
先生の示す人間観には感動するときもあれば、正直言って「こわい!」と思うこともある。よくよく考えると、人間のいろいろな側面、受け入れ難い側面も受け 入れていくのが演劇人の精神なのだ、と腑に落ちる。そしてアマチュアコースの私達にも演劇人としての矜持を披瀝していただくことに、言い様のない感動を覚 える。
教材となる作品やその登場人物の捉え方の深さにも感動する。先生の捉え方を知ると、自分の捉え方の底の浅さに愕然とする。だから……学び続けたい。

そろそろこの文章を閉じたいのだが、そもそも卒業感想文とは何について書くのが正解なのだろうか。
「ここまで書いておきながらそれはないでしょ。」と自分に突っ込まなくてはいけないところだが、「そうだね。」と自分に言ってあげたい気もする。なぜなら最初に書いたように、「私は卒業証書をいただくにはふさわしくない。」と自覚しているからだ。
しかし先生は「卒業証書は敢闘賞のようなもの。」とおっしゃってくださったので、先生が私の頑張りを認めてくださったと喜ぶことにしようとは思っている。 確かに私は出来なくても諦めなかったし、今も諦めない。少しは出来ることも増えてきた。 でも賞をあげるなら私は先生に差しあげたい。先生は、遅々とした歩みの私を見放さないで指導してくださっていらっしゃる。時間の長さだけではない。先生の 指導の一瞬一瞬は、気を抜かない、感覚を研ぎ澄ましての、一瞬一瞬だ。珠玉の時間をくださる先生に、感謝の気持ちでいっぱい。

「卒業感想文として書くべきことが分からない。」と書いたが、卒業証書をいただいたことに対しての身が引き締まる思いがどんどん成長してきていることに、今、気がついた。その思いの中にある決意のいくつかを最後に記す。
○ 先生が言い続けてくださる「体操が一番大切。」を大切にしよう。ここにはたくさん の宝物が隠れているはずだから。
○ 身についたと思っても油断せず練習し続けよう。練習しなければいつかできなくなっ ているということがあるのだから。
○ 身についたことも、正しく身についているか、見直してみよう。自分の都合のいいよ うに変えてしまうのが人間の特性だから。
○ 理解してもしなくても先生のダメ出しを受け止め、勇気を出してやってみよう。自分 の理解の範囲の外に、自分の知らない自分が見つかるのだから。

卒業証書は私をもう一度原点に戻らせてくれた。先生ありがとうございます。

付け足し
スタジオCANの皆さんは、先生を含めて私より若い方達ばかり。若い人大好きだけ れど、私ぐらいの年齢の人も入ってこないかなあ。先生は高齢の(?)私にもちゃんと厳しくしてくれる。私はそこが大のお気に入り!厳しく温かい指導のも と、進歩し続けようという「気持の若い」方、待ってます!(0020)

 

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